くまモン頑張れ小説『丸くて赤いほっぺ』

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その日は全国各地で大雨・暴風警報が出されており、影響は地震で被害を受けた熊本県にも現れていた。そんな中で被災者のために鹿児島から焼き芋屋さんがやってきていた。

「おねえちゃん、さむいね」
「そうだね、もう少しで焼き芋が食べられるからね」
「やきいも、たのしみだなぁ」
ブルーシートで囲われた屋根の下、姉が妹を励ましながら温かい焼き芋を待つ。

機材を抱えた大人達が近づいてくる。焼き芋屋さんをインタビューしに来た取材班だった。
姉は何かを感じとったのか、妹のことを後ろから抱きしめた。
「ほら、こうすれば寒くないでしょ」
それすらなんとか振り絞って出した言葉であった。

リポーターの男性がブルーシートの中までやってきた。
自然と妹を抱きしめる力が強まっていく姉。
しかしリポーターはそんな気持ちなど気にも留めず、あたかもそれが当たり前かのように無言で姉妹を追い払って焼き芋屋さんにインタビューを始めた。
実際に押されたわけではないのかも知れないが、大人の男性の大きな身体から伸ばされた長い腕は、小さい女の子達が恐怖を感じるのに十分であった。

ブルーシートの外に追い出されてしまった二人。
傘を持っていない彼女達は雨に打たれながら焼き芋ができるのを待っている。
「おねえちゃん、つめたいよ…」
「そうだね…」
さっきまでは妹を励ましていた姉も、理不尽な大人の行動に戸惑いを隠せない。
毎日お風呂に入ることもできない環境で、どうやって身体を温めることができるのだろうか。

ふと、雨の向こうから大きな身体をした誰かがやってくるのが見えた。
姉は先ほど取材班が来たときのような恐怖を感じてはいなかった。

その大きな身体の持ち主は、丸くて赤いほっぺを近づけて姉妹に話しかけてきた。
「モンジュール!きみたち、僕のお家に遊びにくるモン!」
「えっ、くまモン!?」
二人とも目を大きく開けて驚いていた。
先ほどの取材班を含めて、周りの大人たちにはくまモンの姿は見えていないようだった。
「僕のお家で温まるモン!」
真っ黒な大きい身体に抱きしめられて前が見えなくなる。これだけで十分に温かい。

「着いたモン」
目を開けると先ほどとは違う景色が見えた。
「おんせんだ!」
「源泉かけ流しだモン!」
お湯に浸かることさえ久し振りの二人。冷えていた身体がどんどんと温まっていく。

温泉から出ると、くまモンがお盆を持ってやってきた。
「ご飯も作ったから食べていくモン」
「わぁー!だご汁だ!」
「せんだご汁だモン」
サツマイモを練って作ったお団子が入っている汁物で、熊本県の郷土料理である。
「おねえちゃん、おいしいね!」
「そうだね、温まるねぇ」

温泉とせんだご汁で十分に温まった姉妹。
「くまモンありがとう!」
ようやく二人も笑顔になった。
「辛いこと、悲しいこと、理不尽なこと、色々なことが起こるかも知れない。それでも何より大事なのは今を生きていることだモン。僕と一緒に頑張るモン!」

目が覚めると元の避難所に戻っていた。
姉妹は母親に向かって同時に同時に喋りだした。
『お母さん!くまモン!くまモンがいた!!』
「あらあら、本当に?」
「おんせん!くまモンのおうちのおんせんにはいったんだよ!」
「くまモンがせんだご汁を作ってくれたんだよ!」
二人とも興奮した様子で、丸いほっぺは赤くなっていた。

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「くまモン頑張れ絵」があるなら「くまモン頑張れ小説」があっても良いと考えた。
タイトルはもっと良いやつがありそう。

これであの女の子たちも少しは救われたかな…

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