小説レビュー

復讐の正当化された世界での物語『ジャッジメント/小林由香』

出典:双葉文庫

去年の冬頃に「今年はどんな本が出版されたんだろう…」と思いながら本屋さんへ行き、平積みになっていたところを見つけた。
「大切な人が殺された時あなたは『復讐法』を選びますか?」という帯の言葉に興味を持ったので買った。

目次

あらすじ

大切な人を殺された者は言う。「犯罪者に復讐してやりたい」と。
凶悪な事件が起きると人々は言う。「被害者と同じ目に遭わせてやりたい」と。
20××年凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。それが「復讐法」だ。
目には目を歯には歯を。この法律は果たして被害者たちを救えるのだろうか?

裏表紙より

復讐法とは

復犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に刑罰として執行できるもの。
被害者(または遺族)は、旧来の法に元づく判決か、復讐法に則り刑を執行するか選択できる。
ただし、復讐法を選んだ場合、選択した者が自らの手で刑を執行しなければならない。

物語は、復讐法に関わる被害者遺族と接する応報監察官(簡単に言うと復讐見届け人)である主人公の視点で進んでいく。

物語は全部で5章

第1章の陰湿な長時間に渡る暴行の末に死んだ息子の復讐をする父親の話はスタンダードな復讐と言っていい。
 
第3章では被害者遺族3名が復讐法を選ぶかどうか話し合いと多数決が行われる。
それぞれの被害者遺族の考えがあって、
同じ悲しみを持つはずの遺族同士でも言い合いする様子が興味深い。
 
第5章は息子から親への復讐。読んでいて辛かった……

自分の中で2016年1番の小説

自分が気になっていた世界が
ここに書かれていたような感覚。
 
小さい頃からずっと
「”目には目を歯には歯を”の仕組みがあれば良いのに」
と思うことがあったので、
そんな世界を見ることができて嬉しかった。
(と同時に怖くもあったけど)
 
 
それが正しいかどうかを
改めて考えさせられるきっかけになった。