ショート小説コンテスト『アンパンマン~誰の味方?~』

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「アンパンマンのおかげだよ! ありがとう!」
町のみんなは帰っていった。
残ったのはいたずらでみんなを困らせ、アンパンマンにやっつけられた悪者…ばいきんまん一人だった。

「まったく、なんで毎日こんなにも悪いことを思いつくの?」
「ははっ、本当だよなぁ」
アンパンマンが呆れている様子に気がついていないみたいだった。
「君は悪いことなんかしないで、普通に働いていたら良いと思うんだけど」
残念そうな顔でばいきんまんを見ていると、彼は嬉しそうに一言つぶやいた。
「でもな、俺様わかったんだ。悪いことをしたら、お前に会えるって」
屈託のない笑顔をアンパンマンにぶつける。
それは町の平和を守る強いヒーローに対しても効果的な攻撃であった。
「なっ、なに言ってるの!?」
急に距離を詰められて慌てるアンパンマン。
その様子にまっすぐな感想を伝えた本人も照れてしまい、無理矢理に話題を変えようとする。
「そっ、そういえば、お前って普段は何を食べてんだ?」
「なんにも。あんこがエネルギーだからね。なんでそんなこと聞いたの?」
「うーん。お前って食べられることはあっても、食べることはないと思って」
「どうしたの? 君は食べられたいの?」
「ばか!そんなんじゃねぇよ!!」
恥ずかしがってじゃれつくようにアンパンマンのマントの端をぎゅっとつかむ。
しかしそれを見たアンパンマンは急に立ち上がり、マントはばいきんまんの手から放れてしまった。
「なんだよ、やっぱり俺様は汚いなんて言うのかよ」
頭についた二本の黒い触覚も心なしか張りがなく、しおれているように見える。
「そうじゃなくて。僕はみんなからは“正義の味方”って言われてる。そんな僕が特定の誰かを好きになっていいのかな…」
グーの形をした丸い手で照れながら頬を掻いている。
赤いアンパンマンの頬がさらに赤身を帯びてくる。
その様子を見てばいきんまんも熱くなる。
「ばかやろう! 俺様を加熱消毒するつもりかよ!」
「あはは、ごめんね」

一瞬だけ訪れる沈黙。

「そういえば、今日ドキンちゃんいないんだけど…家来るか?」
「じゃあ、少しだけパトロールに行ってみようかな…」
今日も町は平和であった。

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コメント

  1. アマン より:

    正義の味方に、特定の親友が居ても、いいよね!
    その方が、人間臭くて。

    • 湊太郎 より:

      アマンさん
      そうですよね!
      アンパンマンはそうでもなさそうだけど、カレーパンマンは「俺たち親友だ!」とか思っていそう…

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