ショートショート『本当になった嘘』

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「昨日の夜、何してたの?」
「外食してたけど」
「誰と?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「あなたが女の子と一緒に歩いているのを見たって子がいるの」
「ああ、あれは妹だよ」
「本当に?」
「本当だよ」
「そうなんだ、よかったぁ」
「心配かけてごめん。じゃあ今日はもう帰るね」

嘘だ。あれは俺の二番目の女だ。
咄嗟に口から出てしまったが、もし俺がさっきの彼女と結婚することになったら…ばれる恐れのある嘘をついてしまったことにとても後悔していた。

家に帰ると、一人暮らしをしていたはずの弟がいた。
何やら結婚相手を連れて来たらしいが…弟の隣には俺が昨日一緒にいたはずの女が座っていた。

「こんにちは…」
「あっ…こんにちは…」
俺はとても驚いたし女も同じ心境のはずだったが、お互いに大きなリアクションはせず、瞼を一瞬だけピクッと動かすに留めた。
それを見た弟は何かを感じ取ったらしく、俺たちに尋ねた。
「ん? 知り合いだった?」
「いや、友達に似ていただけだわ」
「わたしも、似てただけ」

俺たちはこの嘘を隠し通すことができるだろうか…

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