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『座布団どうぞ』

今の職場に入って3ヶ月が経った。
職員とも利用者さんとの関係も
それほど悪くはないと思う。
困ったことを挙げるなら昼休憩の時間か…




たいていの人はお昼ごはんを
ロッカー奥の休憩室で食べる。
広くない、畳が六畳分あるかどうか。
まんなかにはテーブルが一つ。

外で食べてもいいけれど、
1時間しかない休憩のために
出掛けるのはもったいないし、
今の時期は暑すぎるので中で過ごしたい。



私の休憩は13~14時
その時間に休憩室に入ると、
一人の男性がいつもいる。
(仮にHさんと呼ぶ)

Hさんは同じ施設内の別フロアの職員で、
最近入って来た人らしい。
ここの前は金融関係の仕事をされてたそう。
顔も身体も細長くて、髭が濃い。
たぶん40歳前後。 銀縁の眼鏡をかけている。

介護職員はその日のシフトによって
休憩時間は変わるけれど、
Hさんは介護職員ではなくて、
毎日休憩時間が固定らしい。
(おそらく12時15分~13時15分だと思う)


そんなわけでいつも

Hさんが休憩

13時に私が休憩

13時15分頃にHさんがいなくなる


の順番なんだけど、
そのHさんが毎回言ってくるのだ、
「座布団どうぞ」って。



毎回自分が使った座布団を渡してくる。
時には裏にしたり、しなかったり。
「良かったら」と付け足すこともあるけど、
「良くないです」とは言えない。

他に座布団がないならわかる。
だけど部屋の広さに合わないほどに、
座布団は多く積み重なっている。

座布団が遠くにあるならわかるが、
3歩で取りに行ける場所にある。

自分で返すのが面倒なんだろうか、
善意でやってくれているのだろうか、
私はHさんの影響で、
お昼休みに休憩室に入ると
ソワソワするようになっていた。




だけどこの数日、
Hさんは休憩室にいなかった。
なんといつのまにか辞めていた。

決して私が偉い人に何か言ったわけではないが、
とりあえず一つ困ったことは減ったので、
さらに働きやすくなった。


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