私は”アイドル”を演じています。
みなさんがお金を払い、会いに来てくれる理由は
私が”アイドル”という特別な役割を担っているからです。
実際のところ、私にお金を払ってまで会いにくる価値があるのでしょうか。
最近ではファンと親密な関係になったアイドルが、不特定多数の人間から批判を受けることがあるらしいのです。
アイドルとは純潔であるべき存在なのです。
親密な関係になったファンは、アイドルと繋がることによって”自分も特別な存在である”と優越感を得ることができるのでしょう。
他のファンはとてもショックを受けます。「裏切られた」とも思うでしょう。
悲しみだけではなくて、怒りの感情も芽生えてきます。
インターネットの中に批判を書き込みます。
ファンではなくとも、面白がって批判を書く人間も出てきます。
インターネットという安全な場所からアイドルを批判するのです。
私のもとに一組の母娘がやってきました。
「お母さん、あそこにパンダがいるよ!」
「ほらほら、走ると危ないわよ」
「ねえねえお母さん。どうしてパンダの近くにはこんなに人が集まっているの?」
「それはね、この子たちは動物園のアイドルだからよ」
私はここで”アイドル”と演じています。
みなさんがお金を払い、会いに来てくれる理由は
私が”アイドル”という特別な役割を担っているからです。
お金を払って会いに来てくれる人がいる分だけ、私にも価値があるように思うことができます。
さきほどの母娘、母親はとても美しかった。人間の世界でも人気があるのでしょう。
母親の血を受け継いだ娘も綺麗な顔をしていました。
十年後には人間の世界の”アイドル”を演じているかも知れません。
私は安全な檻の中から彼女の成長を見守ることにしましょうか。
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