『コンビニ人間』サイコパスとその周りにいる普通の人たち

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たまたま日曜深夜にTBS RADIO 文科系トークラジオLIFEを聴いて「コンビニ人間はサイコパスの人の話を書いてる」と言ってたので読んでみようと思った。

36歳未婚女性、古倉恵子。
大学卒業後も就職せず、コンビニのバイトは18年目。
これまで彼氏なし。
オープン当初からスマイルマート日色駅前店で働き続け、変わりゆくメンバーを見送りながら、店長は8人目だ。
日々食べるのはコンビニ食、夢の中でもコンビニのレジを打ち、清潔なコンビニの風景と「いらっしゃいませ!」の掛け声が、毎日の安らかな眠りをもたらしてくれる。
仕事も家庭もある同窓生たちからどんなに不思議がられても、完璧なマニュアルの存在するコンビニこそが、私を世界の正常な「部品」にしてくれる――。

ある日、婚活目的の新入り男性、白羽がやってきて、そんなコンビニ的生き方は「恥ずかしくないのか」とつきつけられるが……。

サイコパスの人間が「普通」とはなにかと考えながら生きる様子を描いている。
この物語の中では実際にサイコパスという言葉は使われていないが、そう感じられるシーンがいくつかある。
冒頭の幼少期のエピソードでは、公園で死んでいる鳥を見てみんなは泣き「お墓を作ってあげよう」という流れになっているのに、恵子だけは「せっかく死んでいるから焼き鳥にしよう」と言い出す。

そんな恵子が唯一普通でいられる場所がコンビニのアルバイトだった。
マニュアルの中で普通の人間の”フリ”をしていられる間は、みんな恵子のことを普通の人間のように扱ってくれる。

話は主人公・古倉恵子の一人称で進められる。
自分と同じようにコンビニで働くスタッフは”泉さん、菅原さん”と漢字で名前を書かれているのに対して、地元の同級生たちを「頷いていたユカリが…」とカタカナで書かれている。そういうところに恵子の区別が見られる。
また、恵子による情景描写だけではなくて、恵子の友人が別の友人に対するセリフでも「サツキのところは、子供作る予定とかないの?」とカタカナで書かれているのは、「普通の人間が普通の人間に向かって話しているなあ」という視点なのだろうか。

そんなことを考えてみると、コンビニ側であるのに名前はカタカナのトゥアン君の立場は面白い。
恵子が元バイトスタッフの白羽さん(男性)と同棲していることに対して、周りからは”普通の人間”としての歓迎・お祝いムードになり、恵子は戸惑っていた。そんな中でも変わらずコンビニ業務を一生懸命に頑張るトゥアン君を「慣れないながらも声を張り上げてくれるトゥアン君だけが、今は、私のかけがえのない同志だった」と書かれている。

しかし月日が経ち、スタッフの影響を受けて(この物語では”吸収”と表現)してトゥアン君も変化した。真面目だった彼もフランクを作る手を休めて「古倉さん、コドモ作らないデスか?」と言うようになった。それに対して恵子も「一番怖かった」「トゥアン君がどんどん店員ではなくなっている」と感じている。

「普通」とは何かを、普通ではない人間の視点から考えさせられる作品だった。

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コメント

  1. アマン より:

    なるほど、漢字と、カタカナで、差別化してるんですか?
    ま、未読なんで、判断つかないけど、面白い試みですね。

    • 湊太郎 より:

      アマンさん
      漢字は「自分と同じようにコンビニで働くマニュアルの人(主人公はその面しか見てない)」
      カタカナは「結婚したり子供作ったりしている友人」ですかね。
      男がいることを匂わすだけで、漢字の人たちがカタカナの人たちのように「結婚しないの?」などと言い出すことに主人公が戸惑う様子が面白かったです。

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